2004-01-01から1年間の記事一覧

水平線の終わりには、

水平線の 終わりには虹の橋が あるのだろう誰も見ない 未来の国を少年は さがしもとめる広がる海の かなたから何が呼ぶと いうのだろう希望の星 胸にのこして遠く 旅立つ ひとり昔なつかしアニメソング集のCDをレンタルしてきてぼーっと聴いていて、「海のト…

まざるぶるの書

前回の佳月さんの紹介にあるように、今度の50周年記念LotRではじめてLotRのテキスト中にマザルブルの書の挿絵が使われたわけですが、この文書の英訳は今度の本の中には見当たらないようだと佳月さんの報告にありました。このマザルブルの書の「逐語訳」は …

LOTR 50th ANNIVERSARY EDITION (佳月様による紹介)

[関連したBlog]佳月様から LOTR 50周年記念エディションのレポートをいただきました。コメント欄ではもったいない内容なのでこちらで紹介させてもらいます。 ※ ※ ※先ず外観から。表紙の手触りは高級感があってなかなか気に入りました(でも必ず手を洗ってか…

トールキンのインタビュー集(近刊)

Michael Martinez ”Understanding Middle Earth” という本を拾い読みしていていたところ、「ベルシエル妃の猫」に関する話題で、ファンの質問に答える形でトールキン自身のインタビューが引用されていた。このトールキン自身によるベルシエル妃に関する情報…

ルイス-トールキン書簡から

The Collected Letters of C.S.Lewis Vollume 2を買った。千ページを越える大部の本で、片手に持ちながら空いた手で辞書を引き引き読むにはかなり辛い。ルイスの書簡集はすでにルイスの兄編集による書簡集、少年時からの親友アーサー・グリーヴズ宛て書簡集…

カーペンターよ、お前もか

海外のトールキンに関する研究本を読んでいると、日本ではほとんど問題にされないようなこと、たとえばトールキンの作品は連綿と繋がる栄誉ある英文学の歴史の一角に加えることができるような文学作品なのか、いや、そもそも普通の意味での文学作品と言える…

C.S.ルイスについて

the suspension of disbelief という言葉がある。〔不信の停止、信じがたい事を(進んで)受け入れること。リーダーズ英和辞典〕物語、とりわけファンタジーを読むとき、読者は意識的無意識的にこの「不信の停止」をして、現実には存在しない生き物や世界の…

映画「薔薇の名前」を見る

映画「薔薇の名前」を輸入DVDで購入、英語字幕で見た。劇場公開時に一度、その後ビデオでも見直しており、さらに原作も読んでいるから英語字幕でもほとんど問題なく見られた。ショーン・コネリーがフランチェスコ会修道士で、自分と同じフランチェスコ会…

旅への憧れ(その三) 海に行こう、海に!

こういったロマン主義的憧れを喚起するものとして、トールキン世界では海への憧れを忘れるわけにはいかない。「緑の葉なるレゴラスよ、そなたは長く木の下に喜びもて暮らしたりき。海に心せよ!岸辺にて鴎の啼くをきかば、そなたの心はその時より森に休らう…

旅への憧れ(その二) フロドとアシェンバハ

しかしフロドの中に厭世主義や一種のペシミズムを見ようとするのは少々行き過ぎかもしれない。改めて「旅の仲間」上巻を拾い読みしてみたが、そういったことをうかがわせる記述は特に見当たらないようだ。しかし、現在の安楽な生活を捨てて、旅に出てみたい…

旅への憧れ(その一) フロドに託されたもの

カーペンターの伝記にトールキンの母の死が若年のトールキンの性格形成に大きな影響を与えたことを説明してる次の文章がある。「…間違いなく、母の喪失は、彼の人格に深甚な影響を及ぼした。母の死は彼を一個のペシミストにしたのだ。 あるいは、むしろ、母…

LotR のラストシーン (その四)

ところでトールキンは最終的になぜこのエピローグをカットすることに決めたのだろうか。トールキンに影響を与えるのはバンダースナッチに影響を与えるくらい困難だとはC.Sルイスの言だが、「王の帰還」のタイプ原稿を読んだ何人かの友人(おそらく一番容赦…

LotR のラストシーン(その三)

前置きが長くなってしまったが、ラストシーンにそんな漠然とした疑問を個人的に抱いていたので、Sauron Defeated に収録されたLOTRのラストシーンの執筆過程-初期稿から始まって、最終的にカットされた「幻のエピローグ」の再録-は多大な興味を持って読んだ…

LotR のラストシーン(その二)

しかしラストシーンに私のような感想を抱く人はどうやらあまりいないようで、逆にあのサムの帰宅シーンと「帰っただよ」の台詞があってこその「指輪物語」であるというふうに考える方が大多数のようだった。特にあらためてリサーチしたわけではないので、た…

LotR のラストシーン(その一)

私は「指輪物語」を初めて読んで以来、サムの帰宅で終わるあのラストシーンに釈然としない感じを持っていた。フロドが「ボンバディルの家で見た夢の中でのように」「白い岸辺と、その先にはるかに続く緑の地を、たちまち昇る朝日の下に見た」ところで物語は…

W.H. オーデンの話(その二)

W.H. Auden A Biography by Humphery Carpenter ,George Allen & Unwin p379より以下訳出「…その後まもなく、彼(オーデン)は多くの人々がなんの文学的価値がないと考えたある本を絶大に支持することで批評家たちを戸惑わせた。すなわちトールキンのThe Lo…

W.H. オーデンの話(その一)

コリン・ウィルソンがトールキンについて書いた”TREE BY TOLKIEN" という小冊子がある。総ページ数47ページしかないこの小冊子はウィルソンがトールキンについて連想の赴くままに書いた軽い読み物という感じの本なのだが、冒頭面白いエピソードが紹介されて…

more than memory 〜思い出以上のもの (?)

(つづき)前回書いたようなことが印象に残っていたので、これに関係する台詞が映画の中に使われているのに気づいたときに、少し引っかかるものがありました。映画では前回引用させてもらったアラゴルンの辞世の挨拶の少し前、アラゴルンがアルウェンへ語る台…

more than memory 〜 思い出以上のもの(?)

「ガラドリエルの鏡と三艘の船」の記事に関していただいたコメントからの連想なのですが、トールキン世界における死ということからアラゴルンの辞世の言葉を思い出しました。その部分を引用させてもらうと "In sorrow we must go, but not in despair. Behol…

cellar door の謎

以前「ドニー・ダーコ」という映画を見ていたら、文学の教師役のドリュー・バリモアが黒板に書かれた cellar door という文字を見ながら、「ある言語学者が言うには、あらゆる言語の組み合わせの中で、cellar door という言葉がもっとも耳に快く響く組み合わ…

We have fought the long defeat.

先日七人の侍とLotR について書いてて、勘兵衛のもう一つ有名な台詞、 「今度もまた負け戦だったな」っていう呟きは、このガラドリエルの台詞、 We have fought the long defeat. に似てるなと思った。 指輪戦争は彼女にとって、初めから負け戦だったと言え…

人生は全面戦争の戦場だ。

"Life is total war, my firiend. Nobody has the right to be a conscientious objector."( 映画「あなただけ今晩は」 Irma La Douce より)和田誠「お楽しみはこれからだ」という映画の名台詞を集めた本があるけれど、映画に限らず、本などを読んでいて、…

七人の侍と指輪物語 

The Encyclopedia of Fantasy という1000ページもある(広辞苑と同じくらいの厚さ)超弩級のファンタジー事典がある。それをペラペラめくっていたら SEVEN SAMURAI という項目が目に入った。「七人の侍」がなぜファンタジー事典に?不思議に思って解説を読ん…

Annotated LotR !! 米版 50周年記念エディション(近刊)

1954年にFotRの初版が刊行されてから今年でちょうど50年目。米での初版の刊行が54年10/21だったのに合わせて今年の10/21にホートン・ミフリン社が50周年記念エディションを発売するらしい。The Lord of the Rings 50th Anniversary Edition http://www.hough…

P.J 映画に関するエッセイ集 (近刊)

この秋、原作研究者の立場から P.J 監督の映画(とその余波)について考察した論文集が出るようだ。Tolkien on Film: Essays on Peter Jackson’s The Lord of the Rings というタイトルで出版元はアメリカのインクリングス研究団体のMythopoeic Society 。紹…

幻の Bilbo's Last Song ポスター

Bilbo's Last Song (邦訳「ビルボの別れの歌」)はトールキンが書いたことすら忘れてどこか書類の束に紛れていたものを Allen &Unwin 社からトールキン宅へ原稿整理の手伝いに出向していたジョイ・ヒルさんが偶然見つけて、感謝したトールキンがこの詩をヒ…

トールキンと一人の日本人の邂逅

実際にトールキンその人に会ったことのある日本人って何人くらいいるのだろう。オックスフォードでトールキンが指導教官だった猪熊葉子氏は別格として、他に直接会ったという人は聞いたことがない。上智大学教授のピーター・ミルワード氏もオクスフォードの…

The Letters of J.R.R.Tolkien

書簡集というと、家族や友人宛てのプライベートな身辺雑記や、出版社あてに書かれた事務的な報告などを想像しますが、たしかにそういう種類の手紙もあるものの、さすが編者のカーペンターとクリストファーはファンが求めるものをよくわかっており、この大部…

J.R.R.TOLKIEN Artist & Illustrator を読む(2)

本書には「指輪物語」を書き進めながら、トールキンがスケッチしたオルサンクの塔やミナス・ティリス、バラド・ドュアなどの貴重な画像が掲載されており、特にオルサンクは最終的な形に決まるまで幾つかのヴァージョンがあったりして興味深いものがあります…

J.R.R.TOLKIEN Artist & Illustrator を読む(1)

「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」の原書です。収録されている絵は「指輪」〜中つ国関連だけでなく、アマチュア画家としてのトールキンの風景画やスケッチ類、ブリスさんやローバーなどの挿絵、エルフの紋章やカリグラフィーの章まで設けられ、ト…