W.H. オーデンの話(その一)

コリン・ウィルソントールキンについて書いた”TREE BY TOLKIEN" という小冊子がある。総ページ数47ページしかないこの小冊子はウィルソンがトールキンについて連想の赴くままに書いた軽い読み物という感じの本なのだが、冒頭面白いエピソードが紹介されている。
以下、数行を訳出してみる。

「数年前に私はW.H.オーデンとランチをとるために彼のニューヨークのアパートを訪問した。彼に会うのはそのときが初めてで、ノーマン・メイラーから彼と仲良くなるのは難しいよと忠告を受けていた。”とても引っ込み思案で、とても英国人的−それも並みの英国人以上にそうなんだ” メイラーの言っていたことは概ね正しかった。
オーデンはとても格式ばっている感じで、おそらく基本的にシャイであった。だが、10分くらい食事をしたところで、彼は突然私に尋ねた。
”君はThe Lord of the Rings が好きかい?”
私は傑作だと思う、と答えた。
”なぜだか君ならそう思うだろうって気がしたんだ”とオーデンはにっこり笑った。
彼は目に見えて打ち解けた様子になり、以後ランチはずっとリラックスした雰囲気で進んでいった…」

(つづく)

Tree by Tolkien

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