C.S. ルイス

「四つの愛」は新訳が出ていた

「四つの愛」(蛭沼寿雄訳)を再読していたら、随所で理解困難な箇所があった。初読のさいはルイスの思想が難解、もしくはルイス自身の表現がうまくなくて言いたいことが伝わってこないのか、あるいは単に翻訳の問題なのか深く考えずに読み飛ばしていたが、…

永遠の絶望の滝

You Are Here: Personal Geographies and Other Maps of the Imagination作者: Katharine Harmon出版社/メーカー: Princeton Architectural Press発売日: 2003/10/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見るPersonal Geographies という…

C.S.ルイスの「心霊」体験

「悲しみをみつめて」に、亡くなったルイスの奥さんの「霊のようなもの」がルイスを訪れた体験が記録されている。 「それはまるで嘘のように非情なものだった。彼女の心が、いっときわたし自身の心と相対した、まさにそのような印象。 心であって、霊という…

ひんがしのいやはて 方角の問題

空と海おちあうところ、 波かぐわしくなるところ、 夢うたがうな、リーピチープ、 もとめるものを見つけるは、 ひんがしのいやはての国。中つ国では海は西方に広がり、エルフと神々の国は西の最果てにあるので、いきおい西方の心理的価値が高いが、一方、ナ…

獅子の威を借る驢馬

辞書を引いていたら、ass in a lion's skin という表現を見つけた。虎の威を借る狐、という意味で使うらしい。「さいごの戦い」の偽アスランは、黙示録に書かれたこの世の終わりに出現するという偽預言者から来ているとは何かで読んだ覚えがあるが、英語にこ…

ナルニアの古典文学ソース

積読になっていたインクリングズ研究の新刊「The Company They Keep : C.S. Lewis And J.R.R. Tolkien As Writers in Community 」by Diana Pavlac Glyer を読み始めた。カーペンターの「インクリングズ」以降、30年の研究成果をぎっしり詰め込んでいる…

C・S ルイス反駁の書

C.S. Lewis and the Search for Rational Religion by John Beversluis という、ルイスのキリスト教護教論に対して反駁を試みる本の新版が出た。ルイスは「キリスト教の精髄」の中で、「理性的な検証によってキリスト教が正しいと思えないのであれば、私は誰…

「物語について」

「何度も読みかえすかどうかということ、それはもちろん、どの本の、どの読者にとっても、よい試金石です。文学的ならざる読者とは、本をたった一度しか読まない人間と定義してもいいでしょう(※1)。マロリーやボズウェル、トリストラム・シャンディやシェ…

Deep Magic と Deeper Magic

Johnnycakeさん、いつもコメントありがとうございます。コメントが長くなってしまいコメント欄に入り切らないのでこちらへ書かせてもらいます。(以下、ネタバレ有り。「ライオンと魔女」映画未見&原作未読のかたは注意してください)ピーターは長男として…

映画「ライオンと魔女」鑑賞

ナルニア、初日に行って来ました。夜の回だったからか、子供の姿はほとんど見当たらず、観客の年齢層が高いのが目についた。映画は原作の雰囲気をよく伝えていたと思う。映画向きに脚色された部分もさほど気にならず、見終わった後、LOTR映画のときのよ…

映画「永遠の愛に生きて」

「ライオンと魔女」のディズニーによる映画化が楽しみな昨今だが、本作は93年に公開されたルイス晩年の唐突な結婚と、妻との死別を描いた伝記ドラマである。以前一度ビデオで見てはいたが、今回は北米版DVDを取り寄せての再見。英語字幕がついているのが助か…

ルイスと神秘主義

Into the Region of the Awe: Mysticism in C.S.Lewis by David C. Downing という本を買った。本書の序文には次のようなエピソードが紹介されている。米国の小学生から次のような質問がルイスに送られた。”アスランの国を訪れることは可能なのでしょうか?”…

ルイス-トールキン書簡から

The Collected Letters of C.S.Lewis Vollume 2を買った。千ページを越える大部の本で、片手に持ちながら空いた手で辞書を引き引き読むにはかなり辛い。ルイスの書簡集はすでにルイスの兄編集による書簡集、少年時からの親友アーサー・グリーヴズ宛て書簡集…

C.S.ルイスについて

the suspension of disbelief という言葉がある。〔不信の停止、信じがたい事を(進んで)受け入れること。リーダーズ英和辞典〕物語、とりわけファンタジーを読むとき、読者は意識的無意識的にこの「不信の停止」をして、現実には存在しない生き物や世界の…