星よ、導きたまえ

ハモンド&スカル夫妻のLotR注釈本(p101)に、ギルドール一行によって歌われるエルベレス賛歌と、カトリック信徒に親しまれているという聖母マリアの賛美歌(stella maris 海の星)が似ているという指摘がある。(*1)まずエレベレス賛歌の原文を引用。Sn…

Hail, son of Hurin. Well met!

このHail 〜, well met という言い回しは、CoHで、トゥーリンとグラウルングの二度の遭遇のさい、かなり辛辣な挨拶として交わされるので一読忘れがたい印象を残すが、以前、C・Sルイスの兄ウォーレン・ルイスが書いた日記「Brothers & Friends」を読んでい…

The History of the Hobbit: Mr Baggins

とりあえず最初の数章を読んでの個人的な発見をいくつか。 ・1960年にトールキンはLotRの文体でホビットの冒険を書き直そうとし、途中で放棄したものの、その試みの最初の数章が存在するらしいこと。これは瀬田訳の「ですます調」を「である調」に書き直そう…

The Children of Hurin 到着。

もともとDVDの販売をしていたDeepdiscount というショップが最近本の販売も始めており、リージョン1のDVDを注文したついでに本書の注文を入れておいたのだが、早くも4/5には発送メールが来て、14日に届いた。ハーパーコリンズ版かホートン・ミフリン版…

「君よ憤怒の河を渉れ」を見る

佐藤純彌監督の映画は「新幹線大爆破」や「北京原人」等、作り手の意図に反して、トンデモ系おバカ映画的な見方をされているようで、本作もややリアル感を欠いたクマの登場や、はなはだ緊張感を欠く劇伴音楽、「男は死に向かって飛ぶことが必要なときもある…

宗教的象徴など

「宗教心理学」(松本滋 東京大学出版会)という本で、ティリッヒが提示した宗教的象徴の分類が紹介されている。この分類を見ていて、今更ながらトールキンの物語の要素と宗教的象徴の類似に感心してしまった。以下、その分類をあげてみると、イ) 聖物―トー…

束翁と沙翁 語句ノート きれいはきたない

・ 「きれいはきたない、きたないはきれい。Fair is foul, and foul is fair. 」「マクベス」冒頭近くで呪文のように魔女が唱える有名な台詞ですが、この fair-foul の組み合わせは、アラゴルンに対するフロドの第一印象、「見かけは悪く(foul)、感じはよ…

ポランスキーの「マクベス」を見る

Macbeth [DVD]出版社/メーカー: Columbia Pictures発売日: 2002/05/27メディア: DVD購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (9件) を見る「トールキンとシェイクスピア」の本を読む前に、少しシェイクスピアについて予習をしておこうと思い、とりあえ…

トールキンとシェイクスピア

今年、こんな本の出版が予定されているらしい。トールキンへのシェイクスピアの影響(というより反発か)は、マクベスに出てくる予言「女の産み落とした者」とエオウィン「人間の男の手によっては」の類似、同じくマクベスの「バーナムの森が動かぬ限り」と…

ベレリアンド地図の額装

ネイスミス挿絵版「シルマリル」に付いているベレリアンドの着色地図を額に入れて飾ってみた。額はハンズで買ってきた在り合わせのもの(2835円也)ですが、こうして額装してみると、折り目はいかんともしがたいものの、なかなか立派そうに見えるではありま…

トールキン百科のうわさ

トールキン百科はテーマ別一覧と、寄稿者一覧ページはあるものの、どの人がどの項目を担当しているのかは、それぞれの項目記事を開いてみるまでわからないので、たとえばShippey教授の書いたものをまとめて読みたいと思った場合、この先生ならこのテーマかな…

Tolkien Encyclopedia 到着。

発送メールが来てから一ヶ月を過ぎても届かないので、また配送トラブルかと気を揉んでいましたが、本日無事到着しました。長旅の間にほうぼうでかなり揉まれた様子で、梱包の箱があちこちぶつけたようにひしゃげてところどころ破れかかっており、中の本の状…

なんだかな

トールキン百科よ・・どこをさ迷っているんだ・・早く来い・・と念じてるうちに年も明け、正月も明けてしまったのにまだ到着しない。よほどふだんの行いが悪いようだ。そうこうするうちに、Tolkien Library にレビューが出た。これ読むと、editor が存在しな…

誓言の重み Oaths and Oathbreaking

Tolkien Studies ?の書評ページに、John・R・Holmes 氏 が書いた Oaths and Oathbreaking : Analogues of Old English Comitatus in Tolkien's Myth というタイトルの論文が紹介されており、トールキン作品における誓言というものの重要性を論じていてとても…

あとは読むだけ。

年内中に「トールキン百科」が届くことを念じていたが、結局届かずじまい。帰省中は手持ち無沙汰なので、持参して田舎で読もうと思ったのに残念。にしてもツン読もずいぶん溜まっており、これから少し消化することに専念せねば。とはいえ来年は「フーリンの…

J.R.R. Tolkien Encyclopedia 制作の内幕

アマゾンUSのカスタマーレビューに寄稿者の一人が、この事典ができあがるまでに色々な紆余曲折があったらしいことを仄めかしているが、その後、編集主幹のDrout 氏がご本人のブログで本の制作過程が実に不条理な展開だったことを明かしているのを遅まきな…

J.R.R. Tolkien Encyclopedia

Companion&Guide のReader's Guide のテーマ別項目を抜き出していて、同じようなトールキン事典の印象であるJ.R.R. Tolkien Encyclopedia: Scholarship and Critical Assessment のほうの項目はどういうテーマを扱っているのだろうと気になっていた。だいた…

「ビルボの別れの歌」が・・

オークションに出ている! ポーリン・ベインズによる「ビルボの別れの歌」の原画(&ポスター)と、詞のオリジナルタイプ原稿、それと詞の著作権をジョイ・ヒルに寄贈する旨を記したトールキン直筆の手紙のセット。スタート金額は$20,000!Tolkien Library な…

Companion & Guide テーマ別項目

Reader's Guide のテーマ別項目を関心を惹くものからポツポツ読んでいるが、どの記事を読んでも実に面白い。たった一つの項目を書くためにも関連しそうなあらゆる文献を狩猟し、徹底的な調査をしていることが伺える。このように膨大な未発表書簡やマイナーな…

Companion & Guide メモ ボーヴォワールの引用文

トールキンの紹介ビデオ「ザ・ロード・オブ・ザ・リングを創った男」(*1)でトールキンがボーヴォワールの著作を引用するところがあり、トールキンとボーヴォワールの取り合わせに意外な思いがした記憶があったのだが、Reader's Guideによれば、この引用部…

The J.R.R. Tolkien Companion and Guide

Companion & Guide がようやく到着。洗練されたデザインの箱に、持ち重りする大判の本が二巻、本箱の上に置いてしばらくその偉容をホレボレと眺めてしまう。イラストや写真一切無しの活字のみ、総ページ数は二巻合わせて2300ページあるそうで、なんとい…

Tolkien Studies 他

Companion & Guide 、到着がやけに遅いなと思ってアマゾンUKのアカウントを調べたら、なんと、どこかの地点でUターンしてしまっていたらしく、発送元に送り返されていた。その旨、アマゾンからはメールで知らせてきていたのだが、その連絡メールはプロバ…

超弩級のレファレンス本たち

ハモンド&スカル夫妻の Companion & Guide を首を長くして待っているのだが、いまだ到着せず。アマゾンUKのデリバリー予定では13日ぐらいに到着になっていたのだが、今頃どの辺を彷徨ってるのやら。ところでハモンド夫妻の本とほとんど踵を接するようにし…

偉大さとは何か

奥泉光が大岡昇平の『レイテ戦記』について書いている文章を読んで唸ってしまった。 『レイテ戦記』について書かれた文章でありながら、あたかも『指輪物語』について書かれた文章のように読めるのだ。「『レイテ戦記』は偉大な作品である。その偉大さは、た…

秋の観念

夜道を歩いているときに、涼しい風にのって、きんもくせいの香りがふと鼻先を掠める時期になると、C・Sルイスの「秋の観念」という言葉を思い出す。「ビアトリックス・ポターの『りすのナトキン』を読んだ時、似たような経験をした。わたしはポターが書い…