中つ国の神学

星よ、導きたまえ

ハモンド&スカル夫妻のLotR注釈本(p101)に、ギルドール一行によって歌われるエルベレス賛歌と、カトリック信徒に親しまれているという聖母マリアの賛美歌(stella maris 海の星)が似ているという指摘がある。(*1)まずエレベレス賛歌の原文を引用。Sn…

宗教的象徴など

「宗教心理学」(松本滋 東京大学出版会)という本で、ティリッヒが提示した宗教的象徴の分類が紹介されている。この分類を見ていて、今更ながらトールキンの物語の要素と宗教的象徴の類似に感心してしまった。以下、その分類をあげてみると、イ) 聖物―トー…

希望という名のあなた

前回の記事に関しては、一つの仮説といってもその内容の性質上、じっさいにアラゴルンが霊的な存在としてケリン・アムロスの丘を訪れたかどうかということはそもそも問題にできることでもないので、ここはあくまでもトールキンの死生観が(言外に)表現され…

悪の問題⑵

ヒックの本によれば、悪の問題に対するキリスト教側からの伝統的な解答は聖アウグスティヌスによって提出され、以後何百年にもわたって一つの模範解答になっているとのことである。後でトールキン神話における悪の起源と比較するために、まずはアウグスティ…

悪の問題⑴

「宗教の哲学」(J・ヒック)という宗教学の本を読んでいて、神学の領域で「悪の問題」がどのように解釈されてきたかがコンパクトにまとまっており、キリスト教の伝統的な神学とトールキンの神話世界の中の悪の問題の解釈について、いろいろなことを考えさ…