J.R.R. Tolkien Encyclopedia 制作の内幕

アマゾンUSのカスタマーレビューに寄稿者の一人が、この事典ができあがるまでに色々な紆余曲折があったらしいことを仄めかしているが、その後、編集主幹のDrout 氏がご本人のブログで本の制作過程が実に不条理な展開だったことを明かしているのを遅まきながら発見した。

これを読むと、当初Drout 氏が構想していたものとはかなり違った本になってしまったというのはいろいろ大人の事情でやむを得ない結果、多少の妥協を迫られたとかそんな甘いものではなくて、版元側のそうとうに杜撰な制作体制の中、企画自体が空中分解してしまいそうになったり、編集の詰めの段階でのチェックがほとんどできないままでの刊行を余儀なくされていた実情などがわかり、すでに本を注文してしまっている身としては、読み進めていくうちにトホホ感がいや増していったのだが―しかし、まあそういった混乱状態の中で、本の仕上がり上の主だった欠点は相互参照などのレファレンス部分に集中しているようではあり、各記事をそれぞれ独立した読み物として読むぶんにはさほど影響がないようで多少は安心した。

イラストに関しては初めから期待はしていなかったが、本来は100点あまりの図版がセレクトまでされていたのに丸々カットされてしまった経緯を知ってしまうと、これもかなり残念な話だ。

これほど高価な本でありながら、とても完璧とはいえないらしいこの事典が、当初入る予定だった図版まで含まれた、より理想に近い状態で、しかももっと安い値段になって再版されるまで購入を控えたほうが良かったのかもしれない(こちらが期待しているほどの内容の本であれば、初版の不備が改善された形できっと改版されていくはずだ)が、新しい版が出版されるとしてもそれがいつのことになるかはわからないので、とりあえず注文してしまったことに、まあ、悔いはない。
(とはいえ、これで1〜2年のうちにもっと安価な決定版が出たら、やっぱり悔しがりはするか。
しかし多少専門的な本とはいえ初版刷りが800部というのは、世界中に存在するトールキンオタの数を考えたらかなり少ないのではないか。この部数の少なさを知ってしまうと、多少の不備には目をつぶってでもやはり注文してしまった気がする。)

後はまあ現物が実際に届いてみて、本の学術レベル(とその方向性)に、私のような専門外の平読者がついていけるかどうかが問題というところか。

J.R.R. Tolkien Encyclopedia: Scholarship and Critical Assessment

J.R.R. Tolkien Encyclopedia: Scholarship and Critical Assessment