Arda Reconstructed : The Creation of the Published Silmarillion を読む

前のブログ(http://d.hatena.ne.jp/zushio/20080119/1200671418)で「すでにHoMeという原資料がある今、77年シルマリルがどのような編集上の処理を経てあの形になったのか、つまりクリストファー(とガイ・ケイが)何を取捨選択し、あるいは書き足したのか、…

オバマ演説でトールキンが下敷きに?

mythsocの投稿から。 オバマ大統領の施政方針演説で、トールキンが下敷きになっている箇所があるという記事が紹介されていた。http://www.huffingtonpost.com/aaron-zelinsky/obamas-rhetorical-inspira_b_169727.html大統領演説の問題の箇所。6) "But in my…

三人の「おくりびと」

米アカデミー賞の外国語映画賞部門に邦画の「おくりびと」がノミネートされているそうで、「おくりびと」の英語タイトルは "Departures" だとニュースでやっていた。この映画は未見なのだが、departure という単語で連想するのは、「ボロミアの死」の章タイ…

引っ越してきました

Doblogの調子が悪いので、引っ越してきました。

トールキン批評の過去と未来

"Tom Shippey's J.R.R. Tolkien: Author of the Century and a look back at Tolkien criticism since 1982."by Michael D. C. Drout and Hilary Wynne プリントアウトして、じっくりと、舐めるように読んだ。タイトルを見ると、シッピー著 Author of the Ce…

ひんがしのいやはて 方角の問題

空と海おちあうところ、 波かぐわしくなるところ、 夢うたがうな、リーピチープ、 もとめるものを見つけるは、 ひんがしのいやはての国。中つ国では海は西方に広がり、エルフと神々の国は西の最果てにあるので、いきおい西方の心理的価値が高いが、一方、ナ…

Tolkien on Fairy-Stories 到着

告知されていた発売予定日から数ヶ月遅れましたが、無事発売されました。本の大きさはThe Children of Hurin のハードカバーとほぼ同型で、厚さもほとんど同じくらいです。(総ページ数は320ページ。私の持っているホートンミフリン版「フーリンの子ら」…

映画「カスピアン王子の角笛」鑑賞 (ネタバレ有)

レイトショーで観たのだが、入りはガラガラ。公開間もないゆえ、多少の混雑を予想していたのに拍子抜けした。原作シリーズでは前作「ライオンと魔女」よりも本作のほうが好きでもあり、映画としても前作より面白くなるのではという期待を持って観に行った。…

At the darkest hour もっとも暗い時に 「パンズ・ラビリンス」のネタバレあり

「さいごの戦い」つながりでもう一つ。先日、ホビットの冒険の映画化で監督候補であるデル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」のDVDが出た。私は日本版が出るのを待ちきれずにアメリカ版のDVDを取り寄せて見てしまったのですが、ラスト近くでパンがオフェリ…

獅子の威を借る驢馬

辞書を引いていたら、ass in a lion's skin という表現を見つけた。虎の威を借る狐、という意味で使うらしい。「さいごの戦い」の偽アスランは、黙示録に書かれたこの世の終わりに出現するという偽預言者から来ているとは何かで読んだ覚えがあるが、英語にこ…

ナルニアの古典文学ソース

積読になっていたインクリングズ研究の新刊「The Company They Keep : C.S. Lewis And J.R.R. Tolkien As Writers in Community 」by Diana Pavlac Glyer を読み始めた。カーペンターの「インクリングズ」以降、30年の研究成果をぎっしり詰め込んでいる…

The Silmarillion - Thirty Years On シルマリル三十周年記念論集

序文によれば、本書はシルマリル刊行30周年を記念して、現在は絶版になっている Rhona Beare のシルマリル論を復刊させるという企画から始まったものらしい 。Rhona Beare 氏といえば、グロールフィンデルが馬に乗るのに轡をつけているのはエルフの乗馬方…

Mythlore 100th Issue トールキンとナルニア

Mythopoeic Society の機関誌、Mythlore の最新号を入手。以前に一時、会員だったこともあるのだが、更新手続きの送金が面倒で放置したまま、自然脱会の形になってしまっていた。(*)今回はたまたま最新号の目次がアップされているのを見て、興味をそそら…

裂け谷の写真?

100円ショップ(ダイソー)で来年のカレンダーを見ていたら、世界の山の写真のものがあり、裂け谷の絵によく似た谷間の写真が載っていたので買ってきた。 トールキンがホビットの冒険のために描いた挿絵も構図は同じだけれど、このカレンダーの写真を見て…

Is That All There Is?

前出のBeversluis の本で、ルイスのJoy の概念について検討しているくだりがあり、Joy という概念に通じる身近な例として、Peggy Lee の歌う「Is That All There Is?」という歌が紹介されていた。題名から はどんな歌なのか思いつかなかったので、検索して見…

C・S ルイス反駁の書

C.S. Lewis and the Search for Rational Religion by John Beversluis という、ルイスのキリスト教護教論に対して反駁を試みる本の新版が出た。ルイスは「キリスト教の精髄」の中で、「理性的な検証によってキリスト教が正しいと思えないのであれば、私は誰…

「物語について」

「何度も読みかえすかどうかということ、それはもちろん、どの本の、どの読者にとっても、よい試金石です。文学的ならざる読者とは、本をたった一度しか読まない人間と定義してもいいでしょう(※1)。マロリーやボズウェル、トリストラム・シャンディやシェ…

優しい厳格

オークションに出ているトールキンの手紙が Tolkien Library で紹介されている。手書きの書面は達筆過ぎてまるで読めないので(笑、トランスクリプトを読む。”stern gentleness ”、ガンダルフの人格的魅力を端的に表していますね。これが子どもにとって、も…

Roots and Branches シッピィ先生の新刊

シッピィ先生、「Author of the Century」以来のトールキン本で、今回はあちこちに発表されたものを集めた論文集になっている。mythsoc に目次内容がアップされており、それを見ると、これまたそそられるタイトルの論文が多い。すでに持っているトールキン論…

Parma Eldalamberon 17

エルフ語に関するトールキン自身の未刊行文献を、おりにふれ掲載している Parma Eldalamberon (クゥエンヤで'The Book of Elven-tongues' の意味だそうです)というエルフ語の研究誌があり、トールキン本人による文献はできるだけ集めたいと思う一方で、HoMe…

「ヒストリエ」岩明均 1〜4巻

コミックファンの間では今更かもしれませんが、ネット上の紹介文を読んで面白そうに思い、1巻〜4巻を一気読みしました。「寄生獣」でもそうでしたが、この作者は人体の切断を嬉々として描く趣味があるようで、最初のうちは、斬殺シーンを存分に描くために…

ふくろをかぶっていなかった?

The History of the Hobbit は浅学の身には全編にわたって何かと教えられることが多いけれど、ちょっと書き留めておきたい個人的な発見を一つ。ビルボとスマウグの会話の場面で、スマウグにお前は何者だと聞かれたビルボが、自分の素性や本名を明かすのは賢…

気になる本

今回で四巻目となるTolkien Studies を購入。毎号、肝心の論文のほうはロクに読んでもいないのだが、二巻目以降、書評欄の充実振りがすごく、ほとんど書評を読む目的で買っている。今回も既刊、近刊で読んでみたい本がいくつかあったので書いておく。 The Ro…