ひんがしのいやはて 方角の問題
空と海おちあうところ、
波かぐわしくなるところ、
夢うたがうな、リーピチープ、
もとめるものを見つけるは、
ひんがしのいやはての国。
中つ国では海は西方に広がり、エルフと神々の国は西の最果てにあるので、いきおい西方の心理的価値が高いが、一方、ナルニアでは海が東に開け、アスランの国は太陽が昇る最果ての東 The Utter East の彼方になるので、ミドルアースのメンタルマップに親しんだ後、ナルニアを読むと、北半球から南半球に移住した人のような方角的混乱がありそうだ。
前のブログ記事に書いたMythlore 100号の Charles A. Huttar “Deep Lies the Sea-Longing”: Inklings of Home という論文を読んでいたら、西欧では、聖ブレンダン伝説を筆頭に、楽園的な幻想の島や国は西方、大西洋の方角と相場が決まっており、その点、トールキンはヨーロッパの伝統に即しているけれども、対してナルニアが東に海を持つのは、海が東側に開けているアイルランドのベルファスト生まれのルイスが、幼少の時分から日の出る方角に海を見ていたことにあるのではないかと推理しており、ああ、そういう子どもの時に見ていた原風景の影響というのは大きいかも、と思った。個人的な話になりますが、私は一番近場の海まで車でゆうに3時間はかかる内陸生まれで、本物の海(この時は太平洋)を見たのは物心ついてからでしたが、指輪物語の舞台が基本的に内陸で、ホビットたちは海をほとんど知らない内陸人であるという設定も個人的に感情移入しやすい地理的設定ではありました。
朝びらき丸東の海へ―ナルニア国ものがたり〈3〉 (岩波少年文庫)
- 作者: C.S.ルイス,ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: ペーパーバック
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