トールキン批評の過去と未来

"Tom Shippey's J.R.R. Tolkien: Author of the Century and a look back at Tolkien criticism since 1982."by Michael D. C. Drout and Hilary Wynne
プリントアウトして、じっくりと、舐めるように読んだ。タイトルを見ると、シッピー著 Author of the Century の書評がメインのようだが、大部分は過去二十年間に発表されたトールキン論を分析した長文エッセイで、メジャーマイナー問わず、発表された論文のほとんど全てに目を通しているらしい二人によるトールキン批評の分析は読み応えがあった。なぜ1982年以後からかと言うと、シッピー先生のThe Road to Middle-earth が刊行されたのがその年で、この著こそがその後のトールキン批評を変えた分水嶺だという認識に基づいている。膨大な数にのぼる論文に目を通していると、まず目に付くのはやたらに同一テーマの繰り返しが多いことだそうで、誰も他人が書いた論文を読んでないのではないかという疑念が湧いてきたりもするそうだ。よく取り上げられる三大人気テーマは以下の通り。

  • トールキン作品のソース(元ネタ)研究 Source Study
  • 善と悪の問題 Good and Evil in Tolkien
  • 「英国人のための神話」 A"Mythology for England"

これらのテーマで論文が書かれるさいの問題点などもあげられており、これからトールキンで論文を書こうと思っているような人がいたら、いろいろ参考になるのではないかと思います。エッセイの付録としてかなり詳しいビブリオグラフィーがついているので、参考文献を探すのにも役立ちそう。

The Road to Middle-earth: Revised and Expanded Edition

The Road to Middle-earth: Revised and Expanded Edition