「ヒストリエ」岩明均 1〜4巻

コミックファンの間では今更かもしれませんが、ネット上の紹介文を読んで面白そうに思い、1巻〜4巻を一気読みしました。

寄生獣」でもそうでしたが、この作者は人体の切断を嬉々として描く趣味があるようで、最初のうちは、斬殺シーンを存分に描くためにこの時代を舞台に選んだのかとも思いましたが、読んでいるうちに作者が本気でエピック的に壮大な物語を拵えようとしていることに気づき、主人公の出自が語られるころにはすっかり物語に引き込まれていました。作者のスプラッター趣味は、むしろこの時代に生きることの過酷さの表現になっているといえなくもないでしょう。

主人公の見かけのテンションの低さに反して、実はけっこう泣かせどころの多い物語で、不意打ち的に熱いものが喉元にこみ上げてきたりするので油断がなりません。
4巻目に入って物語は一つの山場を迎えるのですが、村の攻防戦が終わった後、主人公がとった言動の裏にある心意気を村人が十分に理解している場面にはやられました。どうも寡黙な英雄と、その内心の理解者という構図に弱いようです。

これから先、物語がどう展開するのか、久々に続きをワクワクして待つ気持ちになった作品です。

ところでC・S・ルイスはLotRウェルギリウスの「アエネーイス」との共通した魅力の一つとして、
「ストラテジー=戦略が描かれている。それは単なるコンバット=戦闘とは別物である。」と書いていたが、岩明均の場合、それは戦術・兵法(tactics)の面白さといえるかもしれない。「ヒストリエ」を読んだ後「寄生獣」をまた読みたくなって再読したところ、戦術を考案することへの好みはすでに「寄生獣」ではっきりと打ち出されていることに改めて気づいた。

ヒストリエ コミック 1-7巻 セット (アフタヌーンKC)

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