C・S ルイス反駁の書

C.S. Lewis and the Search for Rational Religion by John Beversluis という、ルイスのキリスト教護教論に対して反駁を試みる本の新版が出た。

ルイスは「キリスト教の精髄」の中で、「理性的な検証によってキリスト教が正しいと思えないのであれば、私は誰にも信仰を持つことを求めない」という発言をしており、これは宗教を通常、理性に反する、もしくは理性を越えたものとする世間的風潮からすれば、かなり挑発的な発言ともいえる。本書では、ルイスのこの主張を文字通りに受け取り、ルイスがキリスト教の正当性として説いている論拠を一つ一つ検討していき、ルイスが主張する、理性によるキリスト教の弁証(rational religion)は失敗しているとする。

本書がPrometheus Books という、アンチ宗教をテーゼとする本を出している版元から出たことでもわかるように、ルイスの思想に対する建設的批評ではなく、偶像破壊的な意図でもって書かれている印象はぬぐえないけれども、総じて議論の運び方はフェアであり、私などは著者のルイス批判を通して逆にルイスのキリスト教の異形性(著者によれば、ルイスの思想はプラトン主義と合体した鵺的なキリスト教であり、聖書に基づくパウロ的な伝統からかけ離れている)など、なるほどと思うところも多かった。

C.S. Lewis and the Search for Rational Religion

C.S. Lewis and the Search for Rational Religion