Is That All There Is?

前出のBeversluis の本で、ルイスのJoy の概念について検討しているくだりがあり、Joy という概念に通じる身近な例として、Peggy Lee の歌う「Is That All There Is?」という歌が紹介されていた。題名から はどんな歌なのか思いつかなかったので、検索して見つけた歌詞全文を読んでみる。

人生の様々な局面での夢想と現実のギャップというか、人生への期待値と、この世の現実が与えてくれるものとのギャップに失望を繰り返していき、そのつど人生という果実から得られるものは「これで全てなの?」と歌う、ペシミスティックではあるものの、深刻な絶望とも違う、不思議な魅力を持った歌。

Beversluis の本では、ルイスのJoyと同じく、世界に対するこの種のないものねだりの態度は欲求不満を引き起こすだけの、およそ子どもじみた精神であると一蹴されており、まあそういう見方も一理あるとは思うけれども、ルイスのロマン主義のほうに共感してしまう身としては、これもまたこの存在宇宙を超えた、超越的なるものへの憧れをそれと知らずに歌っていると深読みできなくもなく、そう思って聴くと、なかなか味わい深い歌なのだった。

ところでこの歌のメロディはどんなものかと YouTube で検索してみたら、スコセッシ監督の映画「アフターアワーズ」の中で印象的に使われていた歌だったので驚いた。この映画はコンピュータ技術者の悪夢の一夜を描いた、明るいカフカというか、エンターテイメントな不条理もので、たまに無性に見返したくなる映画の一つなのだが、今までこの歌の歌詞に注意したことがなく、このような全文を持つ歌だということを知ったことで、この映画の味わいもいくぶん増したように思う。
If that's all there is, my friends, then let's keep dancing...

アフター・アワーズ 特別版 [DVD]

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Natural Woman / Is That All There Is

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