ナルニアの古典文学ソース
積読になっていたインクリングズ研究の新刊「The Company They Keep : C.S. Lewis And J.R.R. Tolkien As Writers in Community 」by Diana Pavlac Glyer を読み始めた。カーペンターの「インクリングズ」以降、30年の研究成果をぎっしり詰め込んでいる感じで、参照している文献の量は凄いものがありそうだ。紹介される引用部分も一つ一つが面白く、注の隅々まで読む気にさせてくれる。
注の一つで、M・A・Manzalaoui という人が、ナルニアに影響を与えたとおぼしい古典作品を列挙しているのが紹介されていた。
まず福音書の存在は別格として、以下、引用してみると、
「ホーマー、プラトン、ウェルギリウス、アラビアンナイト、ベオウルフ、中世英語のロマンスたち(Sir Orfeo、 サー・ガウェインと緑の騎士、Havelock, マロリーのアーサー王の死)、チョーサーによる詩少なくとも三篇、ダンテ、シェイクスピア、ミルトン、ワーグナー、不思議の国のアリス、ハックルベリー・フィン、Richmal Cromton の Williams シリーズ、そしてルイスの友人のチャールズ・ウィリアムズとトールキン」だそうです。
Havelock とRichmal Cromtonは聞いたこともなかった名前だが、リーダーズ英和には載っていた。ルイスの好みだったマクドナルドや、ネズビット、ケネス・グレアムなどはリストに入らないのだろうか。
こう並べられてみると、ナルニアというのはルイスの好きなものをふんだんに詰め込んだ、かなり趣味的な世界でもあったという感じがする。
趣味的ということでいえば、トールキンの中つ国もそうとう趣味的な世界だとは思いますが、あちらはもっと審美的に統一された趣味的な世界というか。。
しかしまあ、トールキンほど厳しい審美的基準を持たないわれわれにとって、ナルニアを読む愉しみには、ルイスのフィルターを通した、西洋古典文学のいろいろ美味しいエッセンスを味わえるということもありそうだ。
The Company They Keep: C. S. Lewis and J. R. R. Tolkien As Writers in Community
- 作者: Diana Pavlac Glyer
- 出版社/メーカー: Kent State Univ Pr
- 発売日: 2008/12/30
- メディア: ペーパーバック
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