Tolkien on Film を読む

前に書いたPJ映画についての評論集 Tolkien on Film:Essays on Peter Jackson's The Lord of the Rings がようやく到着したので、連休を使って少しづつ読んでいる。(しかし入金から到着まで3ヶ月以上、向こうからの発送メールもなく、二度催促メールを出したのに梨のつぶてで、かなり諦めムードになっていたところだった。Mythopoeic Society さん、頼みますよ〜)

前のブログ記事で紹介したBratman氏のエッセイが一番読みたかったので、まずは彼のエッセイから読み始めた。これは期待したとおり、長年原作信者であった著者が、妥協や物分りのよさを一切排して、once and for all、徹底的に総括する意気込みで書いていて、すこぶる面白い。映画と原作の違い、原作の改悪部分については、原作ファンからの悲鳴に近い落胆の声や批判をネット上で既にさんざん読んできたので、今更新しく付け加えることは何もない気がしていたが、そこは長年トールキン信者であった著者ならではの卓見も多く、特に映画化以前と以降ではトールキン受容に関して決定的な断層、不可逆的な質的変化が生じたことに関する考察には深く考えさせるものがあり、Bratman 氏のエッセイ一篇だけでも、本書を購入した価値は十分にあると思った。
(オスギリアス奪還シーンで、ボロミアがファラミアに乾杯しながら言う台詞、Remember today, little brother. Today, life is good を、ビールのコマーシャルみたいと皮肉ってるのには笑った。これに限らず、映画チームによって新しく書き下ろされた台詞の批判部分は、読んでいて泣き笑いしたくなる。)

私のように他の人が書いた批判を読むことで映画に対する己の不満の溜飲を下げようという歪な動機で読んでいる人間だけでなく、PJ映画の問題点を整理することは、ひいては原作の魅力を改めて確認することにもつながり、映画と原作ともに愉しんだという人にもオススメできる本ではないかと思う。

Tolkien on Film: Essays on Peter Jackson's the Lord of the Rings.

Tolkien on Film: Essays on Peter Jackson's the Lord of the Rings.

Picturing Tolkien: Essays on Peter Jackson's The Lord of the Rings Film Trilogy

Picturing Tolkien: Essays on Peter Jackson's The Lord of the Rings Film Trilogy

The Lord of the Films: The Unofficial Guide to Tolkien's Middle-Earth on the Big Screen

The Lord of the Films: The Unofficial Guide to Tolkien's Middle-Earth on the Big Screen