寺島ゴクリの原型

私のトールキン・コレクションはいちおう本の体裁をとっているものということに自らを戒めた結果、飾って愉しめるものはほとんど持っていないのですが、いくつか例外があって、そのうちの一つがポーリン・ベインズの描いた中つ国マップです。これ、アメリカの古本サイトで見つけて、売値は35ドルくらいだったので、まあ小遣いの許容範囲かと思って注文したんですが、かなりサイズも大きい上に板にパネリングされてるので、送料にさらに30ドルくらいかかってしまったというシロモノです。

個人的にはハウの描いた中つ国マップよりも味わいがあると思い気に入っているのですが、デカいわりにプリントの印刷が甘く、地名とかがボケた感じになっていたりしてその点は残念でした。

この地図の作成にはトールキン自らが協力したとかで、原作に折込まれている地図にはなかった地名をこの地図のために新しく二三付け加えたというエピソードもあります。


The Nine Walkers の勇姿。顔を描かず後姿であるところが気に入ってます。特にボロミアの颯爽とした感じがなかなか。

しかしこの地図を最初に見ておや〜?って思ったのはゴクリの絵でした。邦訳版「ホビット」「指輪」を読んでいる方は皆お分かりのことと思いますが、およそ元ホビット族の一派だったとはとても思えないこの白子の半魚人のようなゴクリの姿、これは邦訳版に寺島画伯が描いたゴクリとそっくりです。

ホビットの冒険」の寺島画伯の挿絵は原書に使われているトールキン自身の挿絵を寺島氏がうまくアレンジして、トールキンのものとはまた違った味わいを持つものになっていますが、建物や景色などはかなりトールキンの絵に忠実に描いています。しかし教授はゴクリの姿を絵としては残していなかったので、この怪物のような半魚人ゴクリは寺島氏のオリジナルかと思っていたのですが、元はこの地図のためにベインズさんが描いた姿だったんですね。

WETAのスタッフが作り出したCGゴクリのインパクトが強烈だったこともあって、今では
この半魚人ゴクリのイメージは表情豊かな映画のゴクリに取って代わられつつあるかもしれませんが、この半魚人ゴクリのキモかわいさにも捨てがたいものがあります。