Following Gandalf by Matthew Dickerson を読む(1)

題名はこれ、何て訳せばいいんだろ?「ガンダルフ(の教え)に従っていくこと」?
副題が Epic Battles and Moral Victory in The Lord of the Rings ってことからもわかるとおり、LotR の特にモラル・道徳的側面にスポットを当てた本です。

映画の三部作公開以来、雨後の筍のごとくLotRの解説本も出ていて、その中にはLotRをクリスチャンサイドから読み解いた本も多く、本書もその類のものかと思ってあまり食指が動かなかったのですが、Mythopoeic Society というアメリカのインクリングス研究の団体で、本書がインクリングス・スカラーシップ賞の候補に挙げられているのを知って興味を持ちました。

それで早速アマゾンで購入。三分の一くらい読んだところですが、これがなかなか面白い。トールキン世界では戦略的・戦闘的勝利よりも道徳的勝利が優先され、例え戦略的にはfool's hope であり、その結果戦争に負け滅びることになろうとも、悪に手を染めるくらいならむしろ死を選ぶーゴクリにかけた情けの連鎖が最後に神の一手のような結末を導くーというようにトールキンの物語を神学的・キリスト教的思想の観点から読み解き、一種の教訓めいたものを引き出すような姿勢ではあるのですが、特にこじつけめいたものは感じられず、あくまでも物語の文脈に即して細かい分析をしていく手際は好感が持てるものでした。


Following Gandalf: Epic Battles and Moral Victory in the Lord of the Rings

Following Gandalf: Epic Battles and Moral Victory in the Lord of the Rings