指輪学50年の結晶 LotR A Reader's Companion

前の記事で書いた LotR A Reader's Companion( ハーパーコリンズ版のペーパーバック)が本日到着した。
900ページという分厚さに細かい活字がビッシリで凄いボリュームです。
まだペラペラと拾い読みしただけですが、期待した以上に凄い本になってます。
本書の眼目である注釈部分はこれからじっくり愉しませてもらうとして、それ以外の部分で注目したところ。

・今まで完全な形では読めなかったLotR初版の序文(HoMeに抜粋有り)。

・有名なMilton Waldman書簡で省かれてた、トールキン自身によるLotRのレジュメ。
これはトールキンがコリンズ社にLotRの売り込みをするために書いた一世一代の長い書簡で、この機を逃したら永遠に日の目を見ることはないかもしれないLotRが自身にとっていかに渾身の力作であるかを必死に伝えようとしているトールキンの姿がうかがえます。第一紀から第二紀の説明にあたる部分はすでに書簡集に入ってましたが(新版「シルマリルの物語」にも再録)、LotRのエンディングに関する部分でHoMeに一部抜粋されていたものの、今回初めて省略されていた部分の全文が読めるようになりました。
(トールキンが書きながら涙したと告白してるくだりとは?)

・A Tolkien Compass 旧版に収録されてたトールキンによる「翻訳の手引き」。

・27ページにわたるLotR執筆の経緯と出版後の反響など。これは出版が待たれるCompanion and Guide でさらに詳細な記述が読めるとのこと。

・謝辞のところに赤龍館の高橋誠氏とKenzo Sasakawa氏という日本人お二人の名前を発見!

内容に関する詳しいレビューはTolkien Library の記事が参考になります。

これだけの内容が詰まって邦貨で1400円ちょいっていうのは安い!

本書がこれから先The Complete Guide to Middle-earth 等と共に LotR愛読者の座右の書になることは間違いないでしょう。

(後記)
とりあえず中身のほうが気になって、物語本文を参照せずに注釈のみを拾い読みするという蛇道な読み方をしているが、案外それでも読めてしまい、物語を読みながら注釈(場合によっては数ページにもおよぶ)を読んでいたらぜったい物語には没頭できないので、こういう読み方のほうが実は適っているのかもしれない。
注釈の多くは該当するテキストに関係するトールキン自身の考察を書簡集から引用したり、HoMeのLotRメーキングからの引用で、基本的に物語の舞台裏に属する事柄が多く、映画を見ながら監督や評論家のコメンタリーを始終聞かされているのに近い感覚である。物語を初めて読む人はもちろん、作品の舞台裏には興味がないという人には向いていないだろう(作品中の難語の解説や「翻訳の手引き」など、資料的価値は盛りだくさんなので持っていて損はないと思うけれども)。
しかしHoMeのLotRメーキングの巻を愉しんで読めてしまう向きにはまさしく薀蓄の宝庫で、LotR刊行以来ここ50年間の指輪学の結晶のような本だと思う。私は面白い注釈や新たな発見に付箋紙をはさんでいたのだが、あっという間に付箋紙だらけになってしまった。

The Lord of the Rings: A Reader's Companion

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