ホビット映画感想(ネタバレ有り)

どうせ映画館で観るのなら、世界初というハイ・フレーム・レート(HFR)を観てみっかいと、3D、IMAX、HFRで観てきた。
いやーぶっ飛びましたね。
スクリーンサイズの巨大な窓の外にある現実の風景を眺めているような凄いリアル感。
カメラが縦横に移動するたびにカメラのクレーンに座って一緒に移動している感覚で、ほとんど中つ国ジェットコースターライド状態。これはもう映画鑑賞というより、アトラクションに近い。アバターアベンジャーズも3Dで観たけれど、こんなふうにスクリーンに入り込むような臨場感を持ったことはなかった。

そして中つ国の雄大な景色がこのリアルさで眼前に繰り広げられるのだからたまらない。
全く不意打ちだったエレボールの素晴しい描写。眼下に広がる裂け谷の美観(谷間の開け具合が指輪のときよりも壮観です)、ゴブリン地下都市でのインディ魔宮の伝説的活劇、もう笑うしかないラダガストの超高速ウサギ橇。霧ふり山脈の裏口前でビルボとゴクリが無言で向き合う瞬間の泣ける演出、そして何よりトーリンのかっこよかったこと。ちょっと暗い目付きのアーミティッジがメラメラと闘志を燃やしながら立ち上がるところなど、文字通り燃え尽きるまで戦ったフェアノールや、第五の合戦で最後まで斃れなかった不屈の闘士フーリンもかくやという人格的迫力で、ほとんど第一紀の神話的ヒーローのようでした。バーリンが「オーケンシールド」の由来を語るところも良かった。ある種の畏怖の念とともに語られる伝説的エピソード、というシチュエーションに痺れる。
そしてラスト、カーロックに降り立った一行が、闇の森のはるか向こうに望む山。この時点で、はなれ山が観られるとは思っていなかったので、ビルボと一緒にもしや!と心の中で叫んでしまった。望郷の象徴であり、探求の目的地でもあることで、はなれ山の遠景が最初に視界に登場するときはぜったい特別な瞬間になるに違いないと期待していたけれど、その期待は満たされました。

ここにはトールキンの原作が持つ特有のチャーミングさ(ゼリーのようにぶるぶる震えるビルボとか銀の房がついた青い頭巾のトーリンとか)はないし、トーリンとビルボのあいだのちょっとムリヤリな緊張と和解とか脚本の荒っぽさを感じるところもありましたが、映画初見の印象としては、まず、物凄い力業を観せられたというか…とにかく得難い体験だったことは間違いなく、自分の場合、映画独自の改変にいちいち躓いていた指輪のときよりもずっと愉しめました。

ホビットの冒険〈上〉 (岩波少年文庫)

ホビットの冒険〈上〉 (岩波少年文庫)

ホビットの冒険〈下〉 (岩波少年文庫)

ホビットの冒険〈下〉 (岩波少年文庫)